虹色アゲハ

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望が、涙ながらに頷くと。 次の言葉を前に… 鷹巨の瞳に溜まっていたものも、ボロリと崩れた。 「最後に、会えてよかった… さよならっ、聡子。 …どうか、元気で」 どんなに愛していても、もう自分にその資格はないと… ちゃんと別れを告げる鷹巨。 そして望も… 髪を撫でてくれたその手を。 抱きしめてくれた温もりを。 ぎゅっと胸に仕舞い込み。 「んっ、さようなら… 鷹巨も、どうか元気でっ…」 ポトリポトリと、終止符を落としたのだった。 だけど、鷹巨の愛を無駄にしないためにも… 望は、その信じたいという気持ちを実践してみようと思った。 勝負のために盛られたという話も。 目を合わさなかった時の話も。 ー「俺も望が全てだよ。 あの頃からずっと…」ー 思い出すたび、胸を掴むその言葉も。 全部信じてみようと… 信じたいと思ったのだ。 ねぇ仁希… 誰よりも普通の人生に焦がれた仁希は、それが一番幸せだと思って。 私にはそんな人生を歩ませようと、罪を消してくれたのよね? だから連れてってもらえなかったのよね? なにより、それらは罪悪感からではなく愛によるものだと… そう信じたいと。 だからしっかり生きなきゃと、望は心を奮い立たせたのだった。
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