クロアゲハ

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そう、何も知らなくても… 揚羽にとって倫太郎は、気を許せる存在だった。 最初から自分の素性はバレていて… だからといってどうなるわけでもなく。 だからこそ何の詐称も必要なく。 何の飾りもいらなければ、何の駆け引きも何の気兼ねもいらないからだ。 「シャワー借りるわね。 あ、タオル貸して?ちゃんと洗濯したやつ」 「どれもしてるよ、洗濯くらい」 「料理はしないくせに?」 キッチンに置かれたカップ麺の空容器に視線を向ける。 「別に、プロテイン摂ってるし」 「まったく… 最近作りに来てなかったし、近いうち栄養がつくもの作ってあげる」 揚羽はたまに、倫太郎に手料理を作ってあげていた。 それは例の、最後にした美人局がきっかけで… ーーー ーー ー 「守れなくてごめん…」 酷く落ち込む倫太郎。 「だから全然大丈夫だし、倫太郎は悪くないから。 むしろ天才ハッカーの力で、こうも身の安全が守られてるワケだし」 「それじゃ守ってる気しねんだよ! 俺はちゃんと、ボディガードで守りたかったのに…」
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