125人が本棚に入れています
本棚に追加
【2】ーー…
「ずっと思ってたんだけど、この匂い大好き」
少年の胸に抱かれ、少女はそれを幸せそうに吸い込む。
「え、どんな匂い?」
「ん〜、なんか甘い匂い」
「なんだろ、何も付けてないけど…
フェロモン?」
少年が猫みたいな目を細めて、そう戯けると。
「だから吸い寄せられちゃうんだっ?」
話に乗っかって、戯れるように唇を重ねる少女。
途端、ローソファに横たわってた2人は、バランスを崩して落ちてしまう。
だけど少年が、くしゃっと八重歯を覗かせて笑い飛ばすと。
少女もぷはっと吹き出して、どちらからともなく再び唇を重ね合った。
「あぁ、帰りたくないなぁ…」
「でも帰んないとヤバいだろ」
そうして、廃ビルの地下にある秘密基地から表に出ると…
夕空に架かった大きな虹が、視界に飛び込む。
「ねぇ知ってた?
虹は希望の象徴なんだって」
「ふぅん、じゃあ知ってた?
俺らの名前が希望になるって」
すると2人はふふっと笑い合う。
「じゃあ一緒なら、この辛い雨も乗り越えられるよね?」
「うん、いつか俺が虹の向こうに連れてくよ」
そして今度はあははと笑い合った。
最初のコメントを投稿しよう!