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「いつか絶対、"世界一の蛍"を捕まえようなー!」
「うん!」
くったくのない笑顔で話す兄の顔を思い出す。
元気で活動的な兄と比べて、私は元々病弱で外にあまり出られなかったからか、内気でめったに笑わない子だった。
そんな私に、初めて蛍を見せてくれたのが兄だった。
その明るい光は、私の暗い心まで明るく照らしてくれた気がした。
たまに許可が降りて兄と一緒に蛍を捕まえに行く時だけはよく笑う、明るい女の子でいられたと思う。
今思うと"世界一の蛍"って一体なんなんだろう。兄はよく口にしていた。当時は兄もまだ子供だったが故に語彙の乏しさはしょうがないかもしれないが、あまりにも抽象的すぎる。
しかし私はそんな兄が好きだった。光を追いかけた夏の日々は、大人になっても色褪せない何にも変えがたい思い出だ。
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