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「あはははは! いやあ、何か君、面白いねえ」 「いや笑い事じゃないし、勝手に吸うなよ、しかもヨダレっ……!」 「案ずるな、我がヨダレには止血と麻酔と抗菌作用がある。そのまま乾かして大事ないぞ」 「いやいやいやでもヨダレだよね、ちょっとねとーってしてるよね! っていうか……ああっ!」  思い出した。  吸血鬼に血を吸われた人間って、確か吸血鬼になるんじゃなかったっけ。 「ぼっ、ぼっ、僕、吸血鬼に……!」 「ならないよ、安心して」 「え、だって映画とか小説じゃ」 「それは完全なる嘘。私たちは、人間を吸血鬼にすることは出来ないし、十字架や聖水も怖くない。まあ朝陽はあんまり得意じゃないけど、浴びても灰にはならない」 「え、そうなの?」 「うん。灰になるのは寿命が来たとき。あ、別に不死身じゃないよ。ただ、人間と栄養源が違って、そして遥かに丈夫で長く生きられる種族ってことだけ」 「……へえ」  種族――彼女は今、確かにそう言った。  二十八年生きてきたけど、吸血鬼が本当に存在してたなんて知らなかった。たぶん日本人のほぼ全員が知らないだろう。  そもそも、ヒトガタの生き物が人間だけって、誰が決めたんだろう。彼女がこうして目の前に存在してることは夢でも妄想でもない「事実」なんだ。 「確かに、すごい秘密だ」 「でしょ? 分かってくれて嬉しいよ。人によっては理解出来なくて錯乱したり、いきなり私を殺そうとするからね。酷いよね、こんな可愛い娘を殺そうだなんて」 「う、うん」  確かに彼女は可愛い。でもそれ自分で言っちゃうのか。図々しいのは長く生きたタマモノか?
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