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それから彼はほぼ毎日迎えに来るし、僕も慣れた。
あと放課後は互いに用事がなければ一緒に帰っている。
幸い、不整脈っぽい症状はそう頻繁に出ることはなかった。
何故かたまに余計な事を考えていると、胸がズキリと痛むような違和感を覚えるだけだ。
「じゃあな」
「あ、うん。ありがとう」
今日も家まで送ってくれた彼に礼を言って別れる。
夕日が僕達の影を伸ばしている、そんな夕暮れ。
手を振る僕に合わせて、手を挙げる彼の姿はやはり様になっていて格好良い。
脚も長いし、筋肉の程よくついた体躯。さすがハーフだ。
ドアを閉めて、小さく呼吸した。
何故か彼といると少し呼吸しずらくなる事がある。イケメンには圧迫感というものでもあるのか。
(決して嫌とか楽しくない訳じゃあないんだけど)
靴をぬぎながら、答えの出ない事をひたすら考えていた。
「あら一郎、帰ってたのね……あらその鞄」
玄関まで出てきた母に指摘され、僕は鞄を見る。
「あっ、これ……」
(僕のじゃあない!)
彼のだ。学年ごとに指定鞄のラインの色が違う。
「間違えたみたい……ちょっと取り替えてくる!」
慌てて家を後にして走った。
まだこの辺りにいるだろう。元来た道を周りを見渡しながら走る。
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