8人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
第二話
お兄さん――薫と話す日は週に一度あの公園で、夜の数時間だけと決まった。彼の仕事の都合が理由だったが、社会人なら仕方ないし、自分もバイトのある時しかこの公園は通らないからむしろありがたかった。
週に一度の楽しみができた影響か、当日は無意識に浮かれているらしく、友人にやたら怪しまれてしまった。
事情は話していない。薫と、他言無用でお願いしたいという約束を交わしていた。
『二人だけの秘密。って言うと特別感があって面白くない? 子どもみたいだけどね』
そう言って悪戯っぽく笑う薫に乗った時点で仲間なのだ。
話す内容は本当に他愛ない。大学やバイト先で何があったとか、自分自身について話すこともある。先週は好きな食べ物が「そば」だと告げたら薫も同じだったことが判明した。
薫は自身についてあまり話さない。だからひとつ知るたび、宝物を見つけたような嬉しさが募る。
もっと知りたいと願うのは、やっぱりわがままなのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!