翼少年、木蓮からの手紙

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翼少年は小学校に上がった。 まだ羽は小さく、飛ぶのがやっとであった。 学校は天上にあり、通学には飛んで行かなくてはならない。 翼少年は国の王子であったが、入学式の朝、町外れの同級生を迎えに行った。 「木蓮も今日から学校だろう?連れてってやるぞ」 と木蓮の家を訪ねた。 木蓮は病弱でまだ羽も生えておらず、飛ぶ事は出来ない。 翼少年はヨイショと木蓮を抱きかかえ、入学式へと天上に向かった。 右に左によろめきながら、それでも懸命に羽をはためかせ 「僕にしっかり掴まっていろよ。離すんじゃないぞ」 と木蓮に言いながら、汗だくで学校へ向かった。 木蓮は泣きながら 「もういいよ。うち、学校行かなくていいから。翼王子、ごめんなさい」 としがみついて謝った。 入学式には遅刻した。 担任の教師は二人の姿を見て、叱る事をしなかった。
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