小夜曲

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「大丈夫?怪我とかない?」 「立てる?」 懐中電灯が眩しい。 警察官が二人。俺を覗き込むようにしていた。 「このバイクは貴方の?」 「あ、はい…」 「免許証、見せてくれる?」 「ええ」 なんだ。職質されてるし。 振り向いた所に、冠木門はもう消え失せていた。 何をしていたのか尋ねられ「pandora」の名刺を出して、月の写真撮影をしていたという話をしている間に、怪しい者ではないらしい確認が取れたらしく、夏の間、坂を走りに来る連中やら、城址にたむろする連中やらが居るので、パトロールしているのだと言った。 この先は行き止まりだから、気をつけて帰るように見送られて、坂を下った。 パトカーが直ぐ下に停めてあったので、二人が狐ではないことはわかったが、門の近くにバイクを停めたのは、初日と同じ。 そして、既に12時を過ぎ、日をまたいで城址内をぐるぐる歩き回っていたのも同じだった。 花は 未だ…。 咲かずとも香る花とは…。 髪に絡んでいたはずの香りをシャワーで洗い流して、ベッドに潜り込んだのは、もう3時を回っていた。 月 花 香り…。 頭の中をその三つがゆらゆらしていた。
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