小夜曲

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夜までにもう一度、山城の本を開き、 扇城の資料に目を通す。 地形図を頭に入れて、月の出、月齢表を確認して、再び出掛けた。 昼と同じように、駐車場にバイクを止めて、同じように、同じようにと思いながら少し早足で歩いた。 懐中電灯の先に、冠木門にぶつかることも、匂い立つような香りを感じることもなく、街明かりに空の半分が白く、細い輪郭を描く月を撮って、満月ならば、遠くの富士山も写り込むかもしれない。と考えながら、元の場所に戻って来た。 月と香り。 新月の夜に人知れず咲き、匂い立ったということだろうか。 なんだか、釈然としない。 狐につままれたような…。 狐…。 あの広い草はらに、ススキが波打ち、九尾の狐の尾が見え隠れするのを想像した。 タイトルは秋の夜長に…にしよう。 ゆっくり膨らんでいく月の連続写真。 無論、合成は容易い。 先を見越したコウさんが言うことは尤もだ。 月見が終わって、1週間も過ぎてから満月のニュースを見ても遅い。 なんだか凹みながら、家路についた。
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