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収穫のないまま、4日5日、1週間が過ぎる。
月は上弦。
その夜は風が強く吹いていて、少し肌寒い。
残暑が続いていたせいか、朝夕の涼風にも、秋が来ていることを何処か忘れていた。
月を追い掛けているくせに…。
地上の風は、空でも吹いているのか、雲が吹き払われた濃い青に、スパッと刀を振り下ろしたような半月が浮かんでいる。
ファインダー越しに、もう半分がくっきりと見えて、光が侵食していくのをいつまでも見つめていたい気分だった。
「綺麗だ…」
そう呟いた瞬間、不意に、香る。
あの夜に出会った香り。
何処?
風が運んで来たのなら風上。
崖下?或いは、この高台に登って来る途中?
昨日も一昨日も、勿論、今夜も気づかずに来たけれど。
走っては危ないと思いながらも、走らずにはいられなかった。
何度も前のめりに転びそうになりながら、消えないうちに、香りの在り方を捕まえたかった。
やがて、風は止み、香りは焚かれているかのように、俺を包み込んでいく。
息苦しい。
門に手が掛かる。
門…冠木門だ。
そびえるように大きな…。
何処をどう走って辿り着いたのだ。
「花は何処に咲いてる?」
俺の問い掛けに
「未だ…」
そう門が応えた気がした。
「君、一寸いいかな?」
いきなり、はっきりした声が降って来た。
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