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柔らかな薄絹に包まれて昇って行く。
誰かの手に引かれて…。
空の暗さが光に溶けて、
ああ、月へと向かっているのか。
「シュウ君、シュウ…」
誰かか俺を呼んでる。
手を引く人?
「そろそろ起きようよ」
「ん…」
「シュウ、寝に来たの?」
夢か…。
コーヒーが鼻先に置かれた。
好い香り。
「コウさん…俺、寝てた?な。あーもう7時回ってるし…なんだかなぁ」
「って、こっちの台詞。まだ引きずってるの?失恋の痛手」
「うーン…いや、失恋っていうか、そもそも恋だったのかは疑問。その辺りに到達する前に、お友達に戻されたというか…」
「そう?結構楽しそうに予定組んでたじゃない」
「ん、歴女だっていうし、城好き?4人でドライブに二度くらい行って…」
「山梨とか行かなかった?2人で」
「行きました。あーもういい。俺の永遠の恋人はカメラだし」
「はいはい。城かぁ。11月号は山城の紅葉狩とかにしようかなぁ」
「あれ?10月祭ですよね?」
「え?何言ってるの。シュウ君が月にしようって言ったくせに」
「あー、そうでした」
「まったく。頼むよ」
「すみません。コーヒーで目、覚めました」
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