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地下通路・終点地点
引っ張られていたはずの左腕が急に軽くなった。
痛い。熱い。
それよりも怖かったのは、
あったはずの左腕の感覚がなくなったこと。
(ざく)
こんどは、わたしのばん
目の前で食われた先輩のように、私も体を食われるんだ。
目を見開いて涙を流しながら、私は思った。
その時、後ろから私の右手が引かれた。
小さな手は、そのまま私を引っ張って走り出した。
(ざく)
何かの音がどんどん遠くなっていく。
(…ざく)
足音は私のものしか響いていないのに、目の前に小さな女の子が手を引いて走っているのが少し不思議だった。
でも、その背中は懐かしいものだった。
私は、その女の子を知っていた。
(……ざく)
何かの音は、もうずっと遠くへ追いやってしまった。
その女の子と手を繋いでいると、冷たいくらいに体温は感じないのに心が温かくなった。
肩まで伸ばした柔らかい髪、両サイドを縛った可愛い桃色のリボン。
ひらひらと舞う、あの子のお気に入りだった赤いワンピース。桃色に赤い花が咲いた、あの子が逝ってしまった日にも履いていた靴。
あっという間に外の光が見えてきた。その時、女の子が手を離した。通路を抜けるかどうかの瞬間に、私は振り返った。
その子は笑って手を振っていた。
懐かしい私のお友だち。小さな小さな、私の同級生。今はもういない、大切だった親友。
その子は言った。
「まだ、こっちにきちゃだめだよ」
通路の口を抜けた瞬間に、私の意識は暗闇へ落ちていった。
次に目を開いて見たものは、病院の白い天井だった。
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