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「今日はね、カレーよ。たくさん食べてくださいな」
「あー、うん、ウマイ! 君のカレーは最高だな!」
マズイ。とてつもなくマズイ。
どうやったら、こんな味のないカレーを作ることができるんだ! 肉と野菜を炒めて煮込んで、市販のルーを入れるだけだろう!?
だけど、僕は食べる。
だって彼女は、料理がマズイ以外は完璧なのだから!!
「お風呂が沸きましたよ~。お先にどうぞ」
「うん、ありがとう」
「はい、お着替え」
「やあ、いつだって君は完璧だな!」
カレーがマズイくらい、何だ。
ほんの数分、舌先の神経を眠らせて平らげれば済むことさ。
衣服を脱ぎ、湯船に入りかけたところで、シャンプーボトルが空になっていることに気づく。
珍しいな。料理以外は完璧な彼女が……。
「おーい、シャンプーが切れ……」
「だーかーらぁ、言われた通りにやってるって!」
ん?
聞き慣れない口調だが、確かに彼女の声だ。
「食べるのよ。どんなにマズイ飯を作っても、食べるの!」
え?
「私だってね、あんな亭主関白気取りなくせに、いざというときはヘタレな男、一刻も早く別れてあなたのところへ行きたいわよ。誰よ、『料理下手なら別れてくれるだろ』ってアドバイスしてくれたのは!?」
え、え?
「あ……」
全裸に腰巻きタオルの僕と。
電話に唾吐き猛る彼女。
目と目が合った、その瞬間……。
「そういうこと!?」
「そういうこと♪」
この恋は、ジ・エンド。
<END>
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