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「アレが欲しい」
「ほぅ、異人か」
「いじん?」
「外国人という意味だ。ワシらとは違う髪の色、目の色をしているだろう?」
「えぇ。金色の髪がキラキラしていて、それに海のような青い目をしていて」
──それがとっても綺麗だなと思った
「ふぅん、中々値の張る異人だな。相当な上玉なのだろう」
「高いの?」
「あぁ、高い」
「でも欲しい」
「そうか。瑠璃子はあの異人が欲しいのか」
「えぇ」
……………
………
……
「旦那様は瑠璃子様に甘いのではないですか? 何故異人の小間使いを瑠璃子様専用になどと──」
「瑠璃子が欲しいといったのだ。どうせじきに嫁に出す娘だ。家にいる間ぐらい好きにさせてやれ」
「──全く……由緒正しき男爵家当主が人買いなど…。しかも相当なご出費だったとか」
「後々いずれかの公爵か子爵に嫁がせる金の卵が望んだのだ。何もいうではない」
「……左様ですか」
(またお父様と宇田が話している)
通りすがりに聞こえた会話に嘆息した。
「……おじょう、さま」
「なんでもないわ。部屋に戻りましょう」
「……ハイ」
何も聞こえなかった振りをして私はその場から静かに立ち去った。
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