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時は明治維新より十七年余り──。
稲田家は元武家だったが幕末での様々な功績が認められ【男爵】という爵位を頂いていた。
その稲田重蔵の娘が私、稲田瑠璃子。歳は数えで14。
男爵という地位に今ひとつ満足出来ていない父の野望のひとつに私の公爵か子爵家への嫁入りがあった。
幼い時から父にそう訊かされて育った私は自身の意思に関係なく納得せざるを得なかった。
だから私は嫁入りまでに好き勝手する事を容認されていた。
私が望んだ事や欲しい物は何でも与えられた。
──そう、今の私は何をしても許される存在なのだ
「ジン、足を擦って。歩き疲れたわ」
「ハイ」
「……」
数週間前にお父様に連れられて行った闇市の一角にあった異人の売り買い場で見つけたジン。
金色の髪と青い目がとても綺麗でまるで青磁の人形かと思った。
一目見てどうしても欲しかった。だからお父様に欲しいと強請った。
私だけのものにしたかったから──。
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