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「ジン、もっと上の方も擦って」
そういいながら着物の裾を大きく広げ太腿を覗かせた。
「……仰せのままに」
ジンの大きな掌がやわやわと私の太腿を擦り始めた。
「ふっ」
その痛いような気持ちいいような、妙な感覚に酔いしれる。
「そういえばジンって何歳だったかしら」
「……18になります」
「四つ上なのね。ふぅん……もっと歳上かと思ってた」
「……」
「ジンの話が訊きたいわ。何か喋って」
「……おじょうさまに話すようなことは何も──」
「じゃあ質問するから答えて」
「ハイ」
私の脚をジンが擦る行為は続いていた。
「ジンは何処で生まれたの?」
「横浜の港町です」
「両親は何処の国の人間なの?」
「父はアメリカ、母は日本です」
「あら、半分は日本人なのね。どうして売り買い小屋にいたの?」
「……」
「答えなさい」
「……父が国に帰ったきり戻らなくなって母ひとりでは生活が成り立たなくて……俺はこんな容姿なのでまともな仕事も出来ず金持ちの道楽のために体を売ることしか──」
「道楽のために体を売る?」
「……」
(それって下男奉公とかそういう意味…?)
でもそれだと『道楽』という言葉が当てはまらない気がした。
「何それ、どういう意味?」
「……つまり……色を売るんです」
「……」
色を売るという言葉は知識としては知っていた。
でもそれは主に女が男にという意味であって、男であるジンの場合、その言葉はどういう意味を持つのかいまいち分からなかった。
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