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街かどで聞いた爆美巨貧の噂が脳裏に蘇った。
コカトリスの毒をものともせず、ヒュドラの頭を素手で引きちぎる恐ろしい人狼が、遊郭や奴隷市場で若い女ばかりを買いあさり、屋敷に連れ込んでいる。
一度連れ去られた女は二度と屋敷から出てくることがなく、彼の屋敷の外には真新しい骨が大量に埋められている
言葉の端々から分かるのは、彼が女性の胸に異常なまでのこだわりを持っているということ。
彼はきっと、買い取った女を蹂躙しては解体し、乳房だけをコレクションしているに違いない。
それが乳狩りの爆美巨貧という異名の由来なのだという。
「やめて、やめてお願い」
「貴様に拒む権利はない。貴様の乳はすでにわれのものだ」
「私のなんて、その、見てもたぶん、面白くないから、どうか」
「面白いかどうかは貴様が決めることではない。貴様の乳がどんな形であろうと、乳はすべて価値ある乳だ」
異常だとイーナは思った。
その異常さが、空の王者をねじり切る腕力に裏打ちされ、横暴さへと昇華されている。
「せめて、ひと息に」
「そろそろ黙れ。乳に障る」
首筋に指を当てられると、イーナの意識は月影の中に溶けていった。
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