美味しさプラスワン

3/4
前へ
/4ページ
次へ
夷藤さんは県内の大学に通う学生さんで私とは1つしか歳が違わない。 彼は少し面長な輪郭で、茶色がかった髪を短く整えている。目は奥二重ですが、切れ長で私は好ましく感じます。 「いや、俺のも白身魚だよ」 彼は少し笑ってそう答えた。 夷藤さんとはこの町で出会った。 私達は友達、なんでしょうか? 夷藤さんとの付き合いは長くないですが、彼が優しい事は充分に知っている。 「では詐欺です。ハントンなのに豚じゃないだなんて」 「いやいや、ハントンのトンは豚って意味じゃないから」 夷藤さんはオムライスにスプーンを刺した。 お店は古い喫茶店のような所でまぁまぁ人が混んでいる。誰も私達を気にしている人はおらず、店内は日曜日の騒がしさが感じられる。 「ではどういう意味ですか?」 私が首を傾げてそう聞くと 「何だったかな?」 と、熱そうなオムライスをふーふーしながら答えた。 「それでも夷藤さんは金沢市民ですか」 「金沢で産まれて住んでたら誰でも金沢市民だよ」 彼はオムライスから顔を上げた。 「むぅ」 確かにそうですが、薄情な金沢市民です!
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加