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一章 真っ赤な赤
2020年 9月
山の中の古びた戸建て。周りには秋を感じさせるような一面の紅葉。しかし、中は時間が取り残されているのかと思うような、湿った空気。梅雨も終わり、秋に移っているというのに未だに梅雨を思い起こしてしまうような空気。そして、義登にとっては恐怖のような空気。
そんな室内では、ある男が試験官を見つめている。肩まである髪の毛。顔はヒゲだらけ。服は色々な色が付着した白衣。体全体からは、眩いばかりの黄色。男は無人島にいたのかというように汚い身なりをしている。しかし、心だけはいつも変わらず黄色に光っている。そんなギャップに義登はいつも笑ってしまう。男は話しかけても聞こえないのではないかというくらい、必死に試験官をみている。しかし、時間は予定通りのきっかり14時。男を待っていたら、日付が変わるのではないかと思った義登は口を開くことにした。
「真史。」
やはり、男は一向に気づかない。義登は、更に大きな声で、背後から声をかける。
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