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嘘か誠か
「からくりなんかじゃない!」
ふくれる姿はどこから見ても抜群に顔のいい人間以外には見えない。
雪人はもうこれ以上この話題を続けることを放棄した。
「……そんなことより自己紹介がまだだったな。俺は本町雪人(ほんまちゆきと)。T大学二年で二十一歳。おまえには数学と英語と化学を教えるから」
「…………」
「おい、空。返事は?」
「気安く呼ぶな」
空が反抗してくるのを無視して、雪人は殊更にやさしく笑ってみせる。
女性だと一発で落ちてしまうその笑顔も、自称エイリアンの生意気少年には通用せず、あからさまに溜息をつかれた。
「おまえな、人の顔見て溜息つくなよ」
「しかたないだろ。石頭。……本当はエイリアンだってこと隠さなきゃならないんだけど、あんたには意地でも信じさせたくなってきた」
「もうその話はいいから」
「今からあんたにテレパシーを送ってやる」
「はあ?」
……また訳の分からないことを言い出した。
雪人がそう思った次の瞬間、頭の中で空の声が響いた。
〈おい、聞こえるか……? 雪人〉
目の前にいる空はピクリとも唇を動かしてはいないし、なによりその声は確かに直接雪人の脳に聞こえてくる。
どんなに疑ってみようとしても、そこには種も仕掛けもなくて。
超能力者かエイリアンか……どちらにせよ空が普通の人間ではないことだけは認めるしかないようだ。
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