エイリアンの弱点

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エイリアンの弱点

「嘘くさい」  雪人がポツッと零すと、空は顔を真っ赤にして怒った。 「なんだと?」 「だっておまえみたいな生意気なガキが超優等生だなんてあり得ない。どちらかと言うといつも生活指導の教師に睨まれているタイプだろ」 「うるさい。生意気なのはあんたの方。大体地球人のくせに俺に偉そうにすんなよ」 「おまえ、それは差別発言だぞ」 「しかたないだろ。俺の星は地球によく似てるけど、地球よりもほんの少し科学が進んでいて、能力も地球人より少しだけ上なんだから。あんたはテレパシーも使えないし、あのUFOを運転することもできないだろ」  こんなふうにむきになるところはまだまだ子供の証拠である。  大人の自分は冷静かつ厳しく空を諭すべきなのだろうが、暴言のあとにあかんべーまで追加されて、さすがに雪人の方も大人げなくキレてしまった。 「このガキ」  雪人は空に手を伸ばすと、柔らかそうな頬をほんの少し強くつねってやる。  すると途端に。 「いっったいー……!」  空はポロポロと涙を流して痛がった。  いきなり泣かれて雪人はびっくりして手を離す。少しだけ強くつねっただけである。それなのに空の痛がりようは尋常じゃない。 「なにすんだよっ。殺す気か!?」 「んなオーバーな……って、待てよ。もしかしておまえ」 「な、なんだよ?」  空はまだ涙をいっぱい目に溜めているが、雪人がつねったところは少し赤くなっているだけで、勿論血も出ていないしアザにもなっていない。 「おまえって、もしかして異常に痛覚が鋭いとか?」 「そ、そんなことないっ」 「じゃ、もう一回つねってもいいか? 今度はもっと強く」  ニヤリと笑って手を伸ばすと、空は体を縮こませて逃げる。 「嫌に決まってるだろ。このDV家庭教師っ」  痛覚が鋭いというのは、どうやら図星だったようだ。空が特別なのか、空の星の人類は全てそうなのかは分からないが。 「これから俺たち仲良くなれそうだな、空」 「誰が。母さんに言って、あんたなんてすぐにクビにしてもらうっ」  空は叫んだが、その願いは叶うことはなかった。  ほんの少しつり気味の切れ長の目が特徴的なイケメンの雪人は、大学でもそれ以外でも女性にモテまくっている。  その能力は空の母親にも遺憾なく発揮されて。 「今日は自己紹介と雑談だけでしたが、明日からはじっくりと勉強しますので」  ニッコリと笑いお辞儀をすると、母親の方は雪人を一も二もなく気に入ってくれた。 「母さん、俺、こいつ気に入らないから、家庭教師なら誰か別の奴を」  空がわめくも、 「空! 先生に失礼でしょ。本当にあんたはわがままなんだから。先生にそういうところも直してもらいなさい」  母親に取り合ってもらえず、ぴしゃりと切って捨てられ、涙目になっていた。
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