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正体不明の気持ち
「ところで、空、おまえ本当は幾つなんだ? まさか一万歳越えてるとか言わないよな?」
「俺は正真正銘の高校一年生で十五歳だ」
口の周りに盛大に生クリームをつけながら、空がにらんでくる。
「おまえの星にも高校ってあるんだ?」
「俺の星と地球はほんとによく似てるよ。だから俺はここに来たんだ」
「いつ、来たんだ?」
「一か月ほど前」
「あのUFOに乗って?」
「まーね」
「おまえの本当の親は心配してないのか?」
それまでは淡々と質問に答えていた空だったが、雪人がそのことに言及した途端、真紅の瞳に昏い影がさした。
「父さんも母さんも、姉さんも死んだ」
そう呟いて目を伏せる。
「……悪い」
謝る雪人に、空は殊更平気そうに答える。
「いいよ。別に」
明らかに無理をしていると分かる空の様子に、雪人はなんだか無性に哀しくなった。
「おいしかったー。ごちそうさま」
ケーキを二個食べ終えた空は唇の周りについた生クリームを紅い舌でペロリと舐めとる。
その仕草が妙に色っぽく見えて、なぜか雪人はドキッとし、ドキッとした自分を腹立たしく思う。
この俺がどうして、こんなガキ……しかも同性のエイリアンにドキッとさせられなきゃいけないんだよ。
「どうかした?」
「別に。そんなことよりおまえ、故郷の星ではどれくらいの成績だったんだ?」
このままじゃ、すっかり空のペースに巻き込まれてしまいそうなので、雪人はわざと先生ぶって訊ねた。
「俺は超優等生で成績はいつもトップクラスだった」
空はふふふと尊大に笑う。
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