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琉太は家族におやすみと告げてから自分の部屋のベッドにこもる。暗闇の中、車の音や木々のさわめきや風の音が耳に入り、背筋が寒くなる。はじめて目の当たりにした人の死。その日は怖く布団を被って震えていたが、いつの間にか眠り込んでしまい気付いた時には日は昇っていた。
居間へと向かうと母さんが洗濯物を畳んでいた。その目は赤くなっていた。
「おはよう……」
琉太がそう告げると母さんは、おはようと返す。
「朝ごはん食べるでしょ?」
母さんに促されるまま遅い朝食を摂り、その後の予定を母さんが琉太に教える。
気が上がらぬまま琉太は母さんの言われるままに過ごす。次々と近所の人たちもあまり会ったことのない人たちが、家に訪れる。何人も何人も横たわっている大ばあちゃんの顔を眺める。
「綺麗なお顔だね」
何人もがそう言った。それを母さんの横で見ていた琉太は、母さんと二人になる時間を見つけて聞いた。
「死んで綺麗で何になるの?それって意味があるの?」
「大ばあちゃんが幸せだったってことだよ。笑顔で天国に行ったって」
「天国って本当にあるの?誰が知っているの?大ばあちゃんは本当に天国に行けるの?」
母さんはつい琉太の頭を抱いた。
「きっと天国に行くから、安心して」
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