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大ばあちゃんの煙
琉太が小学生となる僅か前、大ばあちゃんの前でランドセル姿を披露した。
「長生きはするものだね。ひ孫のランドセル姿が見られるとはね」
大ばあちゃんはそう笑った。大ばあちゃんの部屋は畳の部屋であり、そこにある仏壇には大じいちゃんとじいちゃんの遺影が並んでいた。
「あんたら早々に死ななければ、こんな嬉しいもの見れたのにね」
そんな風に遺影に告げる大ばあちゃんを見て琉太は恥ずかしくもあり嬉しくもあった。大ばあちゃんはまだまだ側にいてくれるとそう思ったときだった。
春を越して夏を過ごし秋が来る。大ばあちゃんは段々と元気がなくなり病院に通う日が何年か続いた。琉太が四年生の三学期の頃にはとうとう入院してしまった。
琉太の町には川がある。青いコートに身を包み、大ばあちゃんが入院してくれる前に編んでくれた茶色のマフラーを首に巻いて歩く川沿いは痛いほどに寒かった。
琉太の隣には幼稚園の頃から仲の良かった亮がいつもいた。亮にはじいちゃんもばあちゃんもいない。だからなのか、亮はよく琉太に大ばあちゃんの話を聞いてきた。
「また大ばあちゃんのおやき食べたいね」
大ばあちゃんは長野県の郷土料理であるおやきをよく作っていた。亮もよくそれを食べに来ていた。
「退院したら、また食べられるよ」
琉太は望みをかけてそう答える。それでも風は冷たかった。
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