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そのときは、携帯ゲーム機を握っていた。 ちょっと揺れているな、とは感じたけど、すぐ収まると思ったし、ジンオウガはもうすぐ倒せそうだった。 でも、全然揺れが収まる気配がなくて、それどころか、どんどん大きくなっていった。 さすがに怖くなって、携帯ゲーム機を放り出して、ダイニングのテーブルの下に隠れた。 小学校のときの防災訓練で、そういう風に教わっていたからだけど、家でも、一番安全なのが、机の下だったのかどうかは、よくわからない。 しばらくして、揺れが収まってきたので、何が起こったのか知るために、テレビを点けた。 海が、燃えていた。 自動車で、移動する人がいた。 その速度では、海に追いつかれてしまいそうだった。 それに気づいた母が、テレビを消した。 ああ、そうか。 今のは、見てはいけないものだったのか。 わからなくなった。 あの自動車の人が、生きていなくて、 自分が生きている意味が、わからなかった。 卒業式はなくなったけど、4月から、予定通り進学した。 一緒に進学するはずだった、同級生の姿が見当たらなくて、パニックになった。 一度だけ電話をかけたけど、留守電で、理由を考えるのが怖くて、なぜ進学しなかったのかは、聞くことができなかった。 田舎も東京都だというところまで調べて、それで調べるのを止めて、大丈夫なことにした。 どういうわけか、前よりずっと、普通に学校に通うことができた。 とりあえず、9月までがんばろう。そう思っていた。 9月に、卒業式の替わりに、「卒業セレモニー」が行われることになっていた。 会えるかもしれないと思った。 人がたくさんいる場所は苦手だったけど、卒業セレモニーには出席した。 いなかった。 その日を当面の目標にしていて、次の目標を立てることができなかった。 それで、また、絶望しそうになった。 でも、ぎりぎり踏みとどまった。 同じ9月に、希望が出現したからだ。
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