恋文

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大好きなあなたへ。 私は今あなたに、この手紙を書いています。 うっふ、なんだか照れますね。 いつもぶっきらぼうな、あなた。 時折見せる横顔が私は好きです。 そんな、あなたが大好きです。 宛名もない、その手紙は今日、ポストに投函された物であった。 毎日、僕の家のポストに宛名不明の手紙が投函される。 それは、どれも恋する乙女が書いたような可愛い文章で大人が書いたような綺麗な文字であった。 だが、それは全く僕には関係ない手紙である。 今の僕は子供であり恋をまだ知らない。 好きな女の子はいるが告白とかしたことは一度もない。 僕の名前は雄人、小学六年生である。 それでも、その手紙は僕にとって心を踊らせる手紙であった。 ある日、その手紙を書いた本人であろう名前が書いてあった。 名前は檸檬と書かれていた。 だが当時の僕にはなんて読むのか分からなかった。 あれから僕は二十歳になり社会人として働きだした。それまで、ずっと手紙はポストに投函されてたのだが働きだしてからこなくなる。 ある時、会社の同じ部署に女の人が入社してきた。 下の名前は檸檬。 僕は運命的な何かを感じ、その女性に声を掛けた。 それから僕達は良い仲になり結婚した。 二人でマンションを借り住む。 彼女は会社を辞め家庭に入り家事をする。 そんなある日、僕は酒に酔い帰宅した。 「今、帰ったよ檸檬!」 「まぁーあなたったら酔ってるのね。こんな所で寝たらダメですよ。さぁー入って入って」 妻の檸檬に促されるまま俺はソファーに腰掛け寝るのであった。僕が途中で起きると妻が何かを書いていたが僕が目を開けると、それをそっと隠す。 うすら目で隙間から覗くと、大好きなあなたへと書かれてあった。 僕はその時、あの手紙が妻からのものであったと直感した。 今、女性の間では過去に手紙を送るのが流行っている。妻、檸檬は過去の僕に手紙を送っていたのだった。
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