そして、気づいたら

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そして、気づいたら

ただ息を飲んでばかりで、何か抵抗の言葉を発そうにもそれは恥ずかしい声と変わってしまい、ただただ喘ぎを漏らしていることも気づかずに、さらに気づいたら身に纏っていた服は何もなくなっていて。 久しぶりの快感――いや、今まで感じたことのないような、考える気力というものが全て吹っ飛ぶような快感に脳内の全てが真っ白になって、息をするのも忘れるような快感に襲われて、恥じらうことも忘れてその欲望に身を任せて、時間が立つのも忘れて無我夢中になっている間に意識を奪われ、私は。 「おぎゃあっ」 子どもの呼ぶ声で、ハッ、と目が覚めた。 その時には、衣服はいつも通りのパジャマを纏っていて、どこも服は乱れていなかった。思わず下着に触れてみたが、記憶ではあんなに濡れていたのに少しも湿ってはいなくて、通常の下着でしかなかった。子どもを寝かしつけようとしたその時のままだった。まるで、寝るまで何もなかったかのように。 でも、私の中の、子宮の奥の奥の方は、名残があって キュ、と締まる感じがして、中はまだ濡れているようなそんな気がして、例え夢であったとしても、あれは現実にあったことだと自分の中にあるものがそう主張していた。 ふと、なんとなくそっと頬に触れたら、サラっとしていていつもより肌の調子がいいように感じて、頭も日々の育児の疲れが吹っ飛んだかのように冴えていて、でも、身体の奥の方に何かどしんとした重みのある疲労が残っているようにも感じて、とにかく、いつもの自分の身体じゃない、という感覚が大きかった。 この感覚は、良く知っている。 旦那と何度も体験した感覚。 情事後の、倦怠感――
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