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「ふにゃぁ」
子どもの泣き声に再びハッと我に返り、慌てて抱き上げた。
乳を欲しがっている口の動きをしていたので、唇を泳がせ探し始める子の口に乳首を含ませる。
温かい、命の重たさを感じながら昨夜のことをぼんやりと思い返した。
身体を這い続ける長い指、じっとこちらを見つめる吸い込まれそうな程の黒い瞳、薄く微笑み恥ずかしげもなく様々な言葉を連ねていく唇、吐息と、唾液音と、私の――――
ボッ、と全身が熱くなった。
私は、授乳しながら何を考えているんだ。
夢見心地のままの頭で辺りを見回すと、そこはいつも通りの部屋で。
見ていると、途端に現実に引き戻されていく。
――――やっぱり
あれは、夢だったのだろうか。
そう思うと寂しいけれど、でもそうでなければ自分はとんでもないことをしてしまったことになるので、若干の安堵もあった。
けれど、それでも悲しみを含んだため息が漏れた。
その、時だった。
「おはよう」
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