そして、気づいたら

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「いいことを教えて差し上げましょう」 「ひぇ」 耳元で悪魔の声が聞こえて吃驚して彼のいる方向を見ると、彼はニコニコしながら長く綺麗な人差し指を唇に立てた。 私はこくこく頷きながら片手で口を覆った。 「浮気と言う罪はね、見えてしまうからいけないんです」 浮気、という言葉にドクンと鼓動が脈打った。 私のこれは、浮気になるの? それとも、夢で片付くのだろうか。 でも、これは、現実で、夢じゃなくて だって、旦那には見えない存在としたわけで でも、したという事実は消えなくて じゃあ、私のこの行為は、経験は、やってしまった現実は 私は、私は 「旦那に見えないからこそ、僕と繋がることは許される」 悪魔の言葉にドクドクと激しく脈打つ鼓動。 いいのだろうか それは、許されていいことなのだろうか けれど旦那にバレないのであれば、いいのかもしれない 見えないならば、何も問題ないのかもしれない いや、それでも本来なら駄目だ やっぱり心が変わってるのだから でも、でも―― でも、私の本能はすでに答えを出している。 「また熟した頃に来てあげましょう。貴女のため込んだ欲はとても美味しかった……是非ともまた味わいたい。……フフ、大丈夫、これは浮気でもなんでもない。ただの、ストレス発散、と思っておけばいいのです。さぁ、次は、いつがいいですか?」 ハマってはだめだ 快楽に溺れてはだめだ そう本能が警告を鳴らし続けているのに、私は思ってしまう 旦那に見えない彼であれば それは浮気にカウントされないのであれば―― このほんのちょっとの火遊びくらい、許されてもいいわよね? だって、いっぱい我慢してるんだから 「次は――」 ああ、もう、私は 旦那の前で出来るこの秘密の快楽からは逃れることは出来ない。
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