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エピローグ
夕暮れ時、白髪の男は一人佇んで相棒を待っていた。
「お待たせしました、師匠」
「遅かったな」
やってきた男にちらりと目を遣り、白髪の男はそう返す。
「あの子の墓に寄ってまして」
「あの子?」
「私が育てていた、人狼の子ですよ」
「ああ、あれか」
白髪の男は、まるで興味が無さそうな口調だった。
「……師匠、あなたは昔、人狼の子を育てたところで感謝などしないって言いましたよね。でも、あの子は最期、俺にこう言ったんですよ。
『今までありがとう、お父さん』って」
「……」
白髪の男は、自分が言ったというその言葉に覚えが無かったが、特に記憶を掘り起こそうともしなかった。
彼にとっては、そんな昔の話などどうでも良かったのだ。
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