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第四章
それから五年。
私は相変わらず地下室で生活していた。
養父は食べ物や本などを差し入れてくれるだけでなく、機会を見つけては私を外に連れ出してくれる。
なんてありがたい話だろう。
私は、養父に感謝している。
その五年の間に養父は結婚し、子供も産まれたという。それでも彼は私のことをなおざりにしたりはしなかった。
確かに、実の子が産まれて以来、私にかけてくれる時間は減ったが、それは仕方のないことだ。誰だって血の繋がりも無い人狼の子などよりも、自分の子の方が大切だ。
むしろ人狼の子なんて、水も食べ物も与えず死なせた方が面倒が無い。それなのに養父は単に私を生かしてくれているだけでなく、教育や娯楽まで与えてくれている。周囲の人間から文句を言われるだろうに、時々は外に出してさえくれる。
私は運が良い。人狼の大半は、このような境遇を享受できないだろう。
私は恵まれている。私は、幸せ者だ。
私は、そのような幸せを恵んでくれた養父に感謝している。
――こいつが『殺さず閉じ込めて飼い続けてくれてありがとう』と感謝すると思うか? そんなわけがない。
私を殺そうとしたあの男は、そう言った。
そんなことは無い。あの男は、間違っている。私は養父に、心から感謝している。
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