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合法なる罪
『私は罪を犯しました。しかし、法で裁かれることはありません』
私の元に現れた男は、そう語り始めた。細かい震えが繰り返される声は所々掠れていて、何処かー具体的には喉がー悪いのではないかと心配になるような物であった。私はこの事から男が酷く沈痛な面持ちで語っていると推察した。残念ながら男の顔をー自分の推測の成否の確認はできないので私の想像の範疇でしかないのだが、恐らくそう間違った想像ではないだろう。
しかし、この男の罪とは如何なるものであろうか。この法治国家において罪を犯しておきながら裁かれることが無いというのは些かーいや、大いに違和感のある話だ。その違和感は私の関心を惹いた。
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