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男は数年前まで医者をしていたらしい。整形外科医で若い頃は大きな病院に勤めていたが、その病院に着いて行けずに地方の病院へ移ったとの話であった。どうやら、若い頃に勤めていた大きな病院であった出来事が彼の罪であるようだ。
「私が若い頃、ある法律がありました。それはもう、今の世では過ちであったという事になっている法です。しかし、あの時代は確かに存在した法なのです」
その法律がどのようなものであるのか、男は明言を避けた。それは自分の罪をありのまま晒す事を躊躇ったからなのかもしれない。それが罪を恥じているからなのか、ここまで来てなお保身という心情が残っているからなのか、それとももっと別の何かなのか。
男は私の疑問など露とも知らぬ様子で語り続けた。
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