鈴を揺らして

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「ーーだ~か~ら、もう別れよって言ったでしょ! 金輪際会うのも、電話するのもナシ! …ハァ? 別れてもまだ好きでいてもいいか? そういうところが無理って言ってんじゃん。じゃね」 千幸は半ば強制的に電話を切り、溜息をつく。そしてアパートの玄関を開け、エレベーターのボタンを押す。 (……はあ、電話するにもいちいち外に出なきゃいけなくなったのはめんどくさいな……でも、こんな話、佳鈴にはちょっと聞かせられない) そしてもう一度溜息をつき、従姉妹の佳鈴が待つアパートの一室へと帰る。 部屋に入ると、佳鈴が食事の支度をしているところであった。 「電話終わったの? じゃあ早く食べようよ」 「わかったわかった、そんな急かさないでよ」 佳鈴は屈託のない笑顔を浮かべながら「いただきまーす」と手を合わせる。千幸もそれに合わせて同じ動作をした。 千幸は2ヶ月前から佳鈴と共同生活をしていた。ワンルームマンションに二人暮らしは、正直に言って窮屈な時もある。友達も自由に呼べない。しかし千幸は2人で食卓を囲むこの時間が嫌いではなかった。
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