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「どうしたの」
「あの……昨日はいろいろありがとうね。優しくしてくれて、嬉しかった。それじゃあ行ってくるね!」
佳鈴がはにかんだ笑顔を浮かべる。その顔が、かつて千幸の絵を見て浮かべたまぶしい笑顔に重なる。
『私、ちゆちゃんの絵が大好き! 他のも描いてよ!』
きちんと面倒を見てあげられるのか、未だに不安ではある。佳鈴が負っているであろうものを軽くしてやれないことに遣る瀬無さも感じる。
それでも、千幸の心には暖かいものが広がっていくような気がした。
(……空っぽじゃない。佳鈴を大事にしたいって思ってるときは、あたしの心は空っぽじゃない)
朝の涼しい空気を吸いながら、千幸は駅へと歩き出した。
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