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次の日になっても、佳鈴の熱は下がっていなかった。むしろ昨日よりも上がっている。
「佳鈴、やっぱり病院行こう」
しかし佳鈴はまた首を横に振った。
「今日一日休んだら大丈夫だと思う」
「でも……」
「本当に大丈夫だから。それに……行きたくないの」
佳鈴がはっきりと拒否するような言い方をするのは珍しい。
(なんでこんなに病院を嫌がるんだろう……もしかして、お母さんが亡くなった時のことを思い出すから?)
どうしようかしばらく考えた後、千幸は携帯を手に取った。
「わかった、病院には行かない。で、今日はあたしも会社休む」
「そんな、悪いよ」
「いーって。全然有給消化してなかったし、いいタイミングなの」
そう言いながら、千幸は座布団の上で正座したまま体を前に倒し、うずくまるような姿勢になる。
「……何してるの」
「サボるときの常套手段。こうすると、本気でしんどそうな声が出る、のよっ」
そのまま会社に電話を掛ける。
「おはようございます……すみませんちょっと、体調が悪いのでお休みさせてもらってもいいですか……はい……失礼します……」
電話を切り、体を起こしながらにやりと微笑む。
「佳鈴もこれから、サボるときはこの方法使っていーよ」
「……使わないよ」
佳鈴はやっと笑顔を見せた。
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