1人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「ーーちゆちゃん、ちーゆーちゃん! 起きて! もう朝だよ〜!」
声が聞こえるが、瞼が思うように開かない。あと5分だけーーそう思って目を閉じようとすると、布団が思い切り捲られる。
目をしょぼつかせながら起き上がると、佳鈴が得意げな表情で布団を掴んでいた。
「やっと起きた、おはよう」
「……おはよう……もうちょっと優しく起こしてよ……」
「だってちゆちゃん全然起きないんだもん」
(それはあんたに夜中起こされたせいだけど……)
喉まで出かかった言葉を飲み込む。
「そういえばあんた、調子はどうなの」
「もう元気! 熱も下がったよ」
そう言う佳鈴の顔色は昨日よりもかなり良くなっている。どうやら嘘ではなさそうである。
「若い子は回復が早いね……」
欠伸をしながら千幸はコーヒーを入れる。そして2人はいつも通り身支度をし、家を出る。
千幸がいつも使っている最寄りの駅は、佳鈴が向かうバス停とは逆方向にある。そのため、マンションを出るとすぐに2人は別々になる。
「それじゃあ、気を付けてね」
「あ、ちゆちゃん待ってっ」
千幸が駅へ向かおうとすると、佳鈴に呼び止められる。
最初のコメントを投稿しよう!