鈴を揺らして

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二人が一緒に暮らすようになったきっかけは、千幸の母からかかってきた一本の電話であった。 『香枝さんが亡くなったって。今週末がお通夜なんだけど、あんた来れる?』 「えっ、そうなの」 香枝というのは千幸の父方の叔母であり、佳鈴の母親に当たる人物である。 『自宅で手首を切ったらしいの。佳鈴ちゃんが見つけてすぐに救急車を呼んだんだけど、手遅れで……理由が理由だから身内だけでお別れしようって話になったのよ。千幸も手伝いに来てくれない?』 「わかった……」 電話を切ってから、千幸は亡くなった叔母、そして佳鈴のことに思いを巡らせた。 香枝が心の病を抱えていたことは知っていた。理由は3年前に香枝の夫、つまり佳鈴の父親が不倫をして家を出て行ったことであった。その前からも気分の浮き沈みが激しく、精神的に不安定な人物ではあったが、夫の蒸発をきっかけに完全に心身の調子を崩してしまったらしい。 その出来事があってから、佳鈴の家とは疎遠になっていた。時たまに父親から状況を伝え聞く程度であった。 (最後に会ったのは、佳鈴が中学生の時か。大きくなったのかな)
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