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葬儀が終わってから、千幸の父親が口を開いた。
「それで、佳鈴ちゃんはこれからどこで生活するかって話だが……」
父親の言葉には誰も答えない。しばらくしてから母親が答える。
「うちで預かりたいのは山々だけど、直樹の受験があるから、ねえ?」
千幸の両親は祖母の方を見る。しかし祖母も良い反応は示さなかった。
「私は持病があるから、佳鈴ちゃんの面倒を見きれるかちょっと不安だわ……」
再び沈黙が訪れる。千幸の母は父に尋ねた。
「ねえ、佳鈴ちゃんのお父さんの親戚で預かってくれる人はいないの」
「それが、そちらの家とは一切連絡が取れないんだ」
佳鈴はそのやり取りを、途方にくれた様子で眺めている。千幸はそれを見て、怒りが頂点に達した。
「……アッタマきた。いい大人が子供の前で、押し付け合いみたいなことして。聞かされてる佳鈴の気持ちも考えなよ。あんたたちどうかしてる」
「親に向かってその口の利き方はなんだ!」
「今はそんな話してないじゃない! ほんとあんたたちは自分勝手よ、そんなに嫌ならあたしが佳鈴を預かるわよ!」
「人を預かるなんて簡単に言うんじゃない。えらそうな口を利いているが、お前はまだ社会人になったばかりの半人前だろう、何かあったときに責任とれるのか」
「責任ぐらいとってみせる! あんたたちみたいに逃げたりしない!」
千幸の剣幕に、その場にいた全員がたじろいだ。佳鈴は目を丸くして驚いていた。
「……千幸ちゃんがそこまで言うなら、お任せしたらいいんじゃないかねえ…」
祖母の言葉により、佳鈴が千幸のもとに身を寄せることが決まった。しかしいざそうなると、千幸は戸惑った。
(売り言葉に買い言葉で言っちゃったけど……本当にちゃんと面倒見れるのかなあ)
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