鈴を揺らして

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「お先に失礼します」 「……もう帰るのか、お疲れ」 千幸より3つ年上の社員が含みのある口調で返事をする。 (何よ、あたしが先に帰るのが気にくわないの? それならあんたもタバコ吸ってサボってないで、とっとと仕事終わらせなさいよ。バーカ) 心の中で悪態をつきながら会社を出る。そのタイミングでスマホに電話がかかってきた。画面を見ると、社会人になったばかりの時に付き合っていた男の名前が表示されていた。出ようか迷って、通話ボタンをタップする。 「……もしもし」 「おう、久しぶり。今ちょうど近くにいるんだけど、飯でも行かね?」 声を聞くと嫌悪感が込み上げる。 (こいつはいつも、あたしをご飯に誘うのは自分がヤリたい時だった) かつてはそれに応えていた。しかし今は違う。 「ごめん、あたし予定あんの。じゃね」 そう言って通話を切る。一瞬せいせいした気持ちになったが、それもすぐに消えた。 (これまで付き合った奴ら、みんなあたしのことを「ヤレる女」としか見てないじゃない。イライラする。……空っぽだ)
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