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警察の一人が大輔の腕を掴んで「お前か?!」と問いただした時、その腕を見てギョッとした。
「これは何だ?!」
まじまじと大輔の腕を見る警官。
「この男性はうちの製品のモニターさんです。事故で四肢を失って、うちの製品を着けてここで体験宿泊をしてくれていました」
警官の間から石井が顔を出して言った。大輔を見る石井の眼が「黙っていろ」と訴えていた。
「そうなのか?」
「・・・ハイ」
一言答える大輔。するとその後ろから別の警官に肩を借りていた綾瀬が大輔の肩をポンと叩いて親指を立てた。
「あ・・・」軽く頭を下げる大輔。この動作を見て警察は大輔が危険人物ではないと判断したようで「自分で歩けますか?」と敬語で聞いて来た。
「大丈夫です」
と答えながら警官の肩を借りて保護される香奈を見ていた。高梨は真っ先に地上へ担いで運ばれていた。倒れて死んでいる異常な格好をした佐川の脳天はパックリと裂け脳味噌が見えている。警察も今回の騒ぎの主犯は佐川だと見てその遺体を取り囲んで何やら話し込んでいた。
「石井会長、あの倒れている男は何者なのでしょうか?」
「・・・・・・」
何も答えない石井は、複雑な表情で佐川の遺体を見ていた。
「これから会長には県警本部に出向いていただきます。詳細を話していただきますので、そのつもりでお願いします」
するとスーツ姿の埼玉県警の刑事が、
「他にも監禁されている者はいないだろうな?」
と石井に聞いて来た。石井はゆっくりと突き当たりにある冷蔵室の扉のような場所を見た。
「あん? あそこにまだいるのか?」
「・・・・・・」
石井は黙って頷いた。
「まだ監禁されている人間がいるそうです!」
「何だと?!」
「今いる被害者達をまずは1階まで連れて行って下さい! そっちを優先して下さい!」
ちょっとした騒ぎになった。
「案内しろ」
スーツの刑事は石井の腕を持つと引っ張った。3人の機動捜査隊が銃を構えてその後ろに続いた。村岡も一緒に来て石井の横に付いて腕を持った。
「開けて下さい。番号は知っていますよね」
石井はドアの暗証番号キーロック盤の前に立って黙っている。
「ワレアクヲジゴクヘオクル・・・」
ボソボソと囁く石井。
「はい?」
それを聞きとれず聞き返す村岡。
「じゃあ開けます・・・」
石井は一呼吸置くと暗証番号を「428674」と押した。
「死人やむなし・・・」
呟く石井。
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