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また20代の頃頻繁に参加していたコンパなどがあると香奈は幹事に名乗り出ていた。まずそこで信頼を得られる。
「お会計お願いします」
そろそろ締めの頃に気が付かれないようにレジに向かう。
「ハイ、ありがとうございます。21,450円になります」
「それを6で割って貰います?」
計算機を叩く店員。
「ハイ、え~・・・3,575円ですね」
「ハイ、分かりました」
まとめて会計を立替する香奈。そして席に戻る。
「会計済ませておきました。一人4,000円でいいです」
という言い回しをすれば大抵が、
「え? ピッタリ4,000円でいいの?」
と聞いてくる。すると、
「端数は面倒なんで私が払っておきました」
このように返すのである。
「ダメよ、均等割りにしようよ~」
「いいよ、男子は1,000円余分に払うよ」
「じゃあ女子は一人3,000円ね」
実際の合計21,450円を男子3人が5,000円出したことで残り6,450円。これを女子3人で割れば2,150円のはずだが、女子1人頭850円余分に払うことになる。
しかしメンバーは当初の一人4,000円の6人で合計が24,000円以上だと思っている。その端数を香奈が払っていると思うのである。
「それでも香奈ちゃんが端数を出しているじゃん」
女子はそうに思う。
「いいよ、面倒だから」
「ダメよ。香奈ちゃんは幹事までやって大変なんだから私達が払うよ」
「いくら出せばいいの?」
「いいよ、レシートはレジのところに捨てちゃったから、1円単位までは覚えていない」
「それでもいくらだったの?」
「大体あと800円くらいかなぁ・・・」
「じゃあ二人で1,000円払うよ」
さらに頂くのである。つまり実際の金額21,450円に対し、男子3人合計15,000円、女子2人合計7,000円で22,000円となる。香奈は支払いはおろか、550円の儲けを得ているのである。
そのような計算を瞬時に当たり前にやって暮らして来た。そんな中、一人だけその香奈を上回る人物がいた。それが大輔だった。
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