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ストーカー疑惑
次の日 Fの手紙だけが来ていた
俺が誰か まだ告白する精神的余裕がないので
電話番号は もう少し待ってください
Kがニューヨークに着いたらしい
君の手紙を俺から転送する仕組みは変わらず
実際の手紙だとニューヨークまで何日もかかる
2週間ほどして Kからの手紙が届き始める
ニューヨークの街角や就職先の美容室の仲間との楽しそうな写真が同封されている 不審な感じはない
私は恋人っぽいテキトーな言葉を連ねた手紙を毎日書き続ける 毎日毎日 今日の出来事や感想を書き綴ると 相手が自分の理解者であるような錯覚に陥る 日常の喜怒哀楽を飾らない言葉で伝える相手がいるだけで妙に心は落ち着くものだと知る
半年もの間 私は迷いなく手紙を書き続けた お互いの日常が手紙の中で語られ 手紙はまるで2人の共通の居間のような存在になる 手紙を読み 書いている時間は2人が居間でコーヒーを飲みながら肩寄せ合って語り合っているような安堵感に包まれる
休みの日は大きな文房具屋まで車を走らせ 様々な便箋や封筒を購入 長い手紙を書くのも楽しい 文字にしてみると今まで気付かなかった自分の思考の特徴が見えてくる Kちゃんの優しさや感性の豊かさにも心が揺らぐ
文通を始めた当初 不審な出来事があったことなど忘れ 私はKがこの町に戻って来たら自然に抱き合って喜ぶだろうと想像する そのまま本当に恋人になって結婚してもいいかも と思い始める
文通を始めて約半年後 クリスマスの前日 ニューヨークから小包が届く ミント味のキャンディーやチョコレート 個性的なデザインのTシャツ2枚 一見どうってことないプレゼントのようだが 私は急に怖くなる 家で手紙を書きながら私が好んでミント味のキャンディーやチョコを食べていることは誰も知らないはずだから Tシャツのデザインや色合いも 私が好きで集めている某ブランドのクッションカバーと酷似している
単なる偶然だろうか?
Kから届く手紙にはUSAの様々なデザインの切手にニューヨークの押印がスタンプされている いろいろな場所で撮影したKの写真も毎回同封されて来る ということは?覗いているのはF?
Fに 久しぶりの手紙を書く
私のお菓子の好み 好きなTシャツのデザイン なぜかKは知っている 誰もしらないはずの私の秘密を なぜKは知っているのでしょう? あなたがストーカーしているのですか? 違うというなら あなたが誰なのか教えて 警官と美容室に向かうことになる前に
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