警告?

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警告?

 次の日、家に帰ると手紙が届いていた 混乱させて ごめんなさい 美容室の固定電話は解約しました 美容室の二階をいとこに貸しています 僕は修行する先を探しています 落ち着いたら住所をお伝えしますので それまでは美容室宛に手紙をください いとこが転送してくれます 初めてマユリンが僕の美容室に来てくれた日 僕は心臓が止まるくらい驚いた なぜか・・・それはマユリンが 死んだ妹にそっくりだったから 妹はストーカーの男に殺された 絶対にそう思う けれど その男は平気な顔で暮らしている マユリンもよく知っている男性だ マユリンには隙がない 男に媚びることも男と遊ぶこともない 仕事と家をストレートに往復する完璧さ それでも僕はマユリンを心配している その男はマユリンに興味を持っている 絶対に暗い夜道を一人で歩かないこと そして必ず毎日 僕に手紙を書くこと マユリンが安全な生活を守るための約束 わかって下さい K  訳のわからない手紙 ますますイライラする が この手紙が真実なら 誰か私の知っている男性がKの妹のストーカー殺人犯で 私にも興味を持っているらしい それは困る それが誰なのか なぜKは実名を教えてくれないのだ  毎日Kに手紙を書くことが 私が安全な生活を守るための約束 とまで言われると不快感がつのる その日 私は返事を書かなかった  次の日の早朝3時半頃 玄関チャイムがピンポンピンポンピンポンと鳴り続け私は怖くて布団の中で震えた 鳴りやまなければ警察に通報しようと思ったが20秒程度でチャイムは止まった  それまで私は徒歩で職場と家を往復していたが怖くなり その日は車で通勤する 仕事が終わり車に戻った時 私の心は凍り付いた 車の運転席に見覚えのない小さな段ボール箱が・・・車の鍵は確かにかかっている  職場に引き返し誰かに助けを求めようと思う だが職場の正職員は私以外は全員男性 怖い 一番年長者である館長に声を掛ける 「朝 乗って来た時 確かに鍵をかけました 段ボールの中を開けてみていただけませんか?」 「勘違いじゃないの?」 館長はブツブツ言いながら私の車まで来てくれた 私は遠隔操作で車のロックを解除する 館長が恐る恐る段ボールを開ける 「うわああああ・・・」 館長は絶叫して段ボール箱を車の外に放り出した 駐車場のアスファルトに落ちた衝撃で段ボール箱のフタが開き 黒い髪の毛がバサッと飛び出て あたり一面に散らばった  その時 一陣の風が舞い 黒い長い髪の毛がワサッと館長の靴にへばりついた 「ぎゃああああ・・・」 館長は足をバタバタさせて髪の毛を振り払い走って館内に逃げ込んだ 私は恐怖で固まる 何だろう これは私への警告か それとも単なるイタズラか 例のストーカーの仕業か それとも美容師K自身の仕業か  念のため警察に通報した 段ボール箱とわずかに残っていた髪の毛は警察が持って行った 私は簡単な事情聴取を受けたが 車に段ボール箱が置かれていた事実のみを伝え Kとの文通やストーカーの話は一切(いっさい)しなかった
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