12人が本棚に入れています
本棚に追加
「たまには生身の人間もいいですね」
「生身の人間って僕ですか?」
「他に誰かいますか?」
繰り返される会話に安心感を覚えた。
日常から解放されたような夜。
「新作の人形が出来たら見せて下さい」
「はい。満月の夜に」
「また生身の人間と会話したくなったら、いつでも呼び出して下さい」
「はい。また満月の夜にここで」
人生で二度と使うことのない口実だった。
「変な人だったね・・・・・・」
人形と会話する女の声を後にすると、僕は自転車にまたがった。
そして並走する月に願う。
〝彼女と再会できますように〟
最初のコメントを投稿しよう!