月夜のおまじない

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「たまには生身の人間もいいですね」 「生身の人間って僕ですか?」 「他に誰かいますか?」  繰り返される会話に安心感を覚えた。  日常から解放されたような夜。 「新作の人形が出来たら見せて下さい」 「はい。満月の夜に」 「また生身の人間と会話したくなったら、いつでも呼び出して下さい」 「はい。また満月の夜にここで」  人生で二度と使うことのない口実だった。 「変な人だったね・・・・・・」  人形と会話する女の声を後にすると、僕は自転車にまたがった。    そして並走する月に願う。 〝彼女と再会できますように〟
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