月夜のおまじない

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 ポツンポツンと何組かのカップルがいて、僕の登場に驚いているようにも感じた。  女の真後ろまで来たとき、ちょうど光が差した。  その明かりは自分の足元まではっきり映し出し、空を見上げた。  久々に見た月はまん丸だった。  僕は普段の月の色を覚えていないくらい、夜空を見ていない。  だから今見ている月がいつもの月より赤いのか分からない。  ただ、その大きさとその明るさに驚き、気付いた時には女を通り越し、波打ち際まで導かれていた。  街灯のないこの場所に闇はなく、心の中で絡み合っている糸がほどける音がした。  初めてだった。  月を温かいと感じたのは。
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