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「久々に生身の人間と会話しました」
「生身の人間って僕ですか?」
「他に誰かいますか?」
女は穏やかな声で小さく笑った。
月明かりと波の音。そして女の声。
不思議な感覚に陥った。
「最初は心配していた私の家族も、今では変人扱いです。どんなに悲しんでも明日は来るし、私の悲しみは私にしか分からない。人形作りの何が悪いのか。今日も月のパワーをチャージしに、わざわざ車を走らせ外出しています。日々の仕事と人間関係に疲れきって出不精な妹より、よっぽど私の方が健全だと思います」
女は真剣な面持ちだった。
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