月夜のおまじない

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  ポケットの携帯電話の振動が、現実の世界に戻る指令を脳に与えた。   先輩からの着信だった。   僕はメールを確認する。  〝グッジョブ!〟と件名があった。 「今日の僕の仕事は終わったようです」  メールには写真が添付されていた。 「仕事は何を?」 「専属のモデルです。顔出しNGの」  冗談に気付くことなく、表情を変えない女に僕は失笑し、写真を見せた。 「わぁぁぁ!」  初めて聞く女のハッキリした声。  僕と女の後ろ姿の写真の頭上には、ピンク色の月が輝いていた。  海に映る月明かりは美しく、僕たちのシルエットは幻想的な色に包み込まれていた。 「きれい!」  僕の携帯電話を覗き込む女のまつげは長かった。  そして初めて向けられた微笑みに、僕は恋に落ちた。
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