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「あんまり困らせないでくれ。」
デンの表情を見て、妻はごめんなさい、と謝った。
「もう何も聞かないわ。」
さて、とクレアは話題を変える。
「今日の帰りは遅いのかしら?」
デンの表情が一瞬翳る。
「さてな...今日もセツナ様にお会いしようと思っている。」
クレアの6本の腕の動きが止まる。クレアが口を開く前に、檸檬色の鳥がキュィィと鳴いた。
「あらま、何かあげた方がいいかしら?この子一体何を食べるのかしらね...」
デンはまだ湯気の立つコーヒーを啜りながら、大真面目な顔で言う。
「そうだなぁ、ローストチキンとかどうだ?」
クレアはデンをきっと睨む。
「すぐそういうこと言うんだから。そういうこというのはよろしくないですよ。」
デンはすまんすまん、と軽く謝った。
「まぁ、でもだいぶ雑食だと思うぞ。」
クレアはため息をつきながら、とりあえずパンをちぎり、鳥の嘴の前にちらつかせる。
「ひゃっ。くすぐったいわ。」
破竹の勢いで飲み込まれていくパンに目を丸くするクレアは、どこか楽しそうに見えて、デンは目を細める。
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「この子、うちで飼えないかしら?」
その晩、ベットの中でクレアが尋ねた。
「そうだなぁ、うちで買うには食べすぎるような気もするが。」
それもそうかもね、といいつつ、クレアは鳥のお腹を愛おしそうに撫でた。
「この子はどう思っているのかしらね。」
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