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再出発
部屋の中に暖かい日差しが差し込んでいる。
開けた窓にかかる薄いレースのカーテンが、外から入ってくる風になびいているのが見える。
カーテン越しに見える庭。
一見、無秩序に植えられているように見える庭木も、よく見れば緻密な計算の元植えられていることが分かる。
目を移すと
和室・・・
壁の長押の部分には、気味の悪い般若の面が二つかかっている・・・
こちらに背を向けてテーブルを前に正座している一人の老婆・・・
体の動きからしてお茶を飲んでいるようだ・・・
(えっ⁉日引のおばあちゃん?)
そう僕が叫ぶと、日引は湯飲みをテーブルに置きゆっくりとこちらに振り返る。
今日も白髪頭をお団子に結び、モスグリーンの着物をゆったりと着こなしている。部屋に差し込む光に当たり、足袋の白さが眩しかった。
日引は右手を軸にして、器用に畳の上で回転し体を僕の方へ向ける。
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